地方創生・地域活性化事例集(VOL2)『神山の奇跡』

徳島県神山町『神山の奇跡』に見る、これからの地方創生の道筋

 

神山町に進出相次ぐサテライトオフィス

人口5900人の典型的な過疎の山村・徳島県神山町に、東京、大阪のIT企業、広告デザイン会社などがサテライトオフィスを次々にオープンさせ、全国から関心を集めています。進出企業は2014年10月末現在で実に11社。一時的ではあったものの、12年1月には流出人口を流入人口が上回る社会増を達成し、「神山の奇跡」とまでもてはやされました。高速インターネットが整備されていれば、働く場所を選ばない企業の誘致が可能になることに気づいた住民の知恵と努力が、全く新しい仕事の形を生み出したといえそうです。

 

人口が3分の1まで減少

神山町は徳島県の県庁所在地・徳島市の西隣にあります。主な産業は農林業で、かんきつ類のスダチやウメの栽培が盛んな土地です。しかし、貿易の自由化などから農林業が衰退すると、急速に過疎化が進み、1955年に2万人以上いた人口が3分の1まで減ってしまいました。危機感を抱いた地元の人たちが2004年、NPO法人・グリーンバレー(大南信也理事長)を設立し、移住者を町に呼び込むための活動を始めたのです。

創造的過疎で仕事を持つ人を誘致

グリーンバレーは検討を重ねるうちに、過疎化が進む現状を受け入れながら、外部から若者やクリエイティブな仕事をする人材を招き、地域の価値を高めようというアイデアにたどり着きます。これを創造的過疎と名づけ、実行に移しました。過疎地の多くは①若者が帰ってこない②移住者を呼び込めない③後継者が育たない-の三重苦にあえいでいます。働く場所がなかったからです。そこでグリーンバレーは働く場所がないのなら仕事を持つ人をスカウトしようと考え、古い民家を改築したうえでホームページを通じて移住を呼びかけました。

 

第1号に東京のIT企業

古民家改築を手伝ってくれた人の知り合いに東京でIT企業を経営する人がいました。その人がSansanの寺田親弘社長で、寺田社長はグリーンバレーのアイデアに賛同し、10年にサテライトオフィス第1号を開設したのです。サテライトオフィスとは本社と同等の業務ができる通信設備を備えた事務所のことで、神山町は高速インターネット回線が整備され、サテライトオフィス設置に十分な環境が整っています。町内を流れる鮎喰川の川原でノートパソコンを開いて作業する社員の姿が、ネットを通じて全国に配信されたのを機に、豊かな自然の中で働こうと、サテライトオフィス設置を希望する企業が相次ぐようになりました。

行政や地元大学も積極的に支援

今ではIT関連のほか、広告デザインや入力代行、コンサルタントなどさまざまな会社が進出しています。地元雇用も約30人。都会からやってきて、子育てをする若い世代の姿が目につくようになり、こうした人向けにおしゃれなフレンチレストランまでオープンしました。もともと民間の発想で進められてきたサテライトオフィス誘致でしたが、徳島県や神山町もこれに協力し、元縫製工場を改装してサテライトオフィスコンプレックスという共同作業場を開設しました。さらに徳島大学もこの共同作業場内にサテライトオフィスを置き、授業や調査活動を通じて地元住民やIT企業社員らとの交流を進めています。

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