大手旅行会社を退職し、37歳で人材育成の専門家として再スタートを切りました。当時、在籍していた研修会社で教わったことは、3つの「つ」でした。
(1)つくる
第一の「つ」は、「つくる」です。これは、場を作ることを意味します。通常、研修会は15名から20名程度の規模感で実施することが一般的です。まず研修講師が意識することは、研修の導入部分で、いかに研修への動機付けを行い、受講者と講師、また受講者同士のコミュニケーションを図るかに集中します。簡単なアイスブレークや、自己紹介などをし、緊張感を取り除きます。そして、この研修の意義、目的、進め方などの説明をします。特に重要なのが、意義です。なぜ、この研修を実施するのか?実施したことで、自身にどのような効果が得られるのか?現場で何が変わるのか?を納得してもらうことが重要です。ここにかなりの労力を割くと言っても過言ではありません。
(2)つたえる
第二の「つ」は「つたえる」です。講演などと違い、研修は通常1日、最低でも3時間程度の時間は使います。受講者にとって、長い時間椅子に座って、講師の話を聞いているだけでは、いくら講師が価値あるコメントを伝えたとしても、相手には効果的に伝わりません。伝えるということは、講師が一方的に話すということではありません。受講者同士が伝え合うことで、より効果的にインプットされていきます。これは、いわゆる「アクティブ・ラーニング」方式といって、受講者同士がディスカッションし、ホワイトボードなどを活用し、考えを構造化し、全体に向けてプレゼンテーションをするなどの能動的な学習技法です。講師はこのような技法を使い、学習する環境を整えることで、間接的に伝えることを図ります。
(3)つなぐ
第三の「つ」は「つなぐ」です。受講者が営業や技術職の場合、理論ばかりを詰め込んでも、現場で使えないと意味がありません。受講者は研修を受講している間「このスキルは、あの現場で使えそうだ」とか、「この考え方は、こういった場面で役立つかも知れない」と、頭の中でイメージできることが重要です。そのため講師は、研修実施の前に、実際に職場を見学し、あるいはクライアントに同行させてもらい、受講者の現場をリサーチすることが必要です。私は今でも、この事前準備はとても大事にします。研修1日につき、事前に3日くらい時間をかけることはざらにあります。この事前準備は、研修だけでなく、講演会でも行います。私が「カスタマイズ型」にこだわるのは、こういう経験がもとになっています。
まとめ
37歳で脱サラし、人材開発の専門家として転身したときは、どうやって生計を立てていくかをいつも自問自答していました。当時、在籍していた研修会社で、学んだ3つの「つ」は、独立して10数年たった今でも、大事にしてるスタンスです。