いまさら聞けないDXの意味
DXという言葉が社会に浸透しています。今さらDXって何か聞けないと言う人も多いと思います。DXすなわち、デジタル・トランス・フォーメーションは、総務省の「自治体DX推進計画概要(2020)」によると、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させること」と説明されています。では、自治体とDXの関連はどう考えれば良いのでしょうか?
DX社会の実現に向けた自治体への期待
同じく、総務省(2020)には、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を目指す」と、DX社会に対する期待が書かれています。さらに、「誰一人残さない、人に優しいデジタル化」というビジョンを掲げ、このビジョン実現のためには、「住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割は極めて重要である」と、自治体の役割の重要性に触れています。ここから自治体DXという言葉が生まれました。
多くの自治体が、DXに未着手という現実
一方で、ある民間会社の調査によると,8割の自治体がDXに未着手であり、着手している自治体も、成熟度は民間企業の半分以下という課題が明らかになりました(株式会社デジタルトランスフォーメーション研究書,2021「自治体DX調査報告書」)。
自治体DXを進める上での課題は?
(1)DX人材の確保と育成
多くの自治体が未着手のDX問題ですが、課題は大きく2つに分けられます。まず一つは、DX人材の確保と育成です。DX化に向けて、体制構築するためには、まずはDX人材を確保、または育成させる必要があります。ところが、DXの専門的な知識や技術を持つ行政内部の人材は限られているため、外部から専門を招聘する一方、時間をかけて内部人材を育成するというパラレルな戦略が必要です。
(2)デジタルデバイド問題
もう一つは、住民のデジタルデバイド(格差)の是正という課題があります。総務省の「通信利用動向調査(2020)によると、スマホの普及率は、64歳以下は90%以上であるのに対し、65歳以上では69.5%に留まっています。さらに、高齢者のみの世帯に限れば、約半数にまで数字は下がることが報告されています。このような住民間のDXに関わる格差を解消していかねばなりません。
ポイントは、DX化の先を見据えること
筆者は、昨年(2022年)、自治体DXの推進に先進的に取り組む、複数の自治体を調査しました。成功している自治体は、このような課題を乗り越え、さらにその先を見据えた戦略を描いていることがわかりました。共通する点は、DX化は目的ではなく、働き方改革の一つとして捉えている点です。DX化によって、人的資源の選択と集中を実現させ、新たなサービスの創出を図っていることがわかりました。