地方創生・地域活性化事例集(VOL1)上勝町の葉っぱビジネス

高齢者とIターンの若者が四国の田舎に集う、理想的な地域活性化事例とは?

成長続ける上勝町の葉っぱビジネス
山村ならどこにでもある木の葉。これを高級和食店向けに出荷する葉っぱビジネスで地域活性化に成功した自治体があります。徳島県の中央部・四国山地に囲まれた上勝町です。人口1700人、町としては四国で最も小さい自治体から生まれたニュービジネスは今や年商2億6000万円の産業に育ち、過疎に苦しんできた町の姿を一変させました。

ミカン枯死で絶体絶命の危機
上勝町はもともと林業とミカン栽培が基幹産業でした。1955年には6300人の人口を抱えていましたが、農林業の低迷とともに若者の流出が続きました。人口に占める65歳以上のお年寄りの割合が50%を超え、高齢化社会の進行も深刻さを増しています。そんな中、81年の大寒波で町内にあるミカンのほとんどが枯死する被害を受け、ミカンに代わる新産業を探さなければならなくなりました。当時、農協で営農指導員をしていた横石知二さんが目をつけたのが、カエデなどの葉っぱでした。軽量でお年寄りでも扱え、京都や大阪の料亭など高級和食店で料理の飾りとして使われているからです。

逆境救った葉っぱビジネス
事業がスタートしたのは86年から。町内の農家4軒の協力を得て始めたものの、ただやみくもに出荷するだけだったため、赤字になることもありました。そこで横石さんが自費で京都の料亭を何度も訪ねるなど、綿密に市場調査してニーズを把握した結果、事業を軌道に乗せることに成功しました。94年度に初めて売上高が1億円を突破。99年には町が出資する第3セクター会社「いろどり」として事業を法人化しました。社長に就任した横石さんの指揮の下、売上高は右肩上がりで伸び続け、いまでは年収1000万円以上を稼ぐ高齢者もいます。売り上げ増の背景には情報通信技術の進歩がありました。最初のころはファクスで通信していましたが、現在は高齢者がタブレット端末を持ち歩き、顧客が望むタイミングで望む商品を必要な量だけ提供する体制を整えているのです。徹底したマーケティングと個人の個性を活かした組織運営、それを結びつける情報通信技術がうまく機能したのでしょう。

知名度高まり、Iターン増加
葉っぱビジネスは町に思わぬ波及効果をもたらしました。その一つがIターン者の急増です。町は葉っぱビジネスで全国から注目を集め、視察が絶えません。その知名度から2009年に期間限定農業体験プログラムの参加者を募ったところ、定員50人に1500人を超す応募がありました。その中には東京大など一流大学を出た人も少なくなかったのです。体験終了後に移住した若者も2ケタに上っています。地域ビジネスを胸に抱き、町内で起業する若者も出てきました。

高齢者の健康維持にも効果
もう一つは高齢者が元気になったことです。県の統計によると、町は県内で最も高齢化率が高い自治体なのに、一人当たりの高齢者医療費は約62万円と県内で最も少なくなっています。山を歩いて葉っぱを集めることで体を健康に保つとともに、パソコンやタブレット端末などハイテクを使いこなすことで脳に良い刺激を与えているのでしょう。町にあった老人ホームはこの事業が軌道に乗るとともに入居者が減り、ついに閉鎖してしまいました。山村の姿は昔のままでも、働く喜びを見つけた高齢者の表情はとびきり明るくなっています。

 

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