とある会社の営業系人材の育成をサポートしています。
先日は、1年生と2年生の合同研修を実施しました。
私は、かねてから、2年目研修の必要性を説いてきましたが、改めて今回、2年目研修(今回は新人と合同)が
いかに企業にとって効果的かを実感しました。
新入社員研修は、どの会社も実施しますが、2年目研修を実施する会社はごくまれです。
2年目研修の効果を今回は考えてみます。
1年目は誰でも頑張る
4月、新入社員は、皆晴れ晴れとした気持ちで、新しい社会人生活を実施します。
私も研修講師として、何度か新入社員研修を実施しましたが、皆一様にモチベーションが高く、受講態度も熱心です。
研修講師をしていても、楽しいものです。
この1年間は、皆から期待をかけられ、注目され続ける存在として、一定の緊張感を持続させます。
また、一定の採用プロセスを経て、入社することで、それなりの潜在能力を保有していることになる関係上、
この1年で大きな能力の差異は生じません。
もちろん多少の差は出ますが、この時期は、まだまだ十分に巻き返しがきく段階なのです。
つまり、1年目は誰でも頑張り、成果もそれなりにあげるゆえ、人材育成にも、それほど力を入れる必要がないと思います。
もちろん、一定のマナーや仕事の進め方は習得させる必要はありますが、研修のような、いわゆるOff-JTではなく、
職場内で、仕事を通じて行われる、OJT教育で十分だと思います。
勝負は2年目の理由
ところが、1年目の終盤に差し掛かってきたころくらいから、仕事のスキルや、モチベーションに差が出始めます。
成果も開きが出始めるのもこの頃からです。そこで、こんなはずではなかったと焦り始めるのです。
自身が自身の能力に不安を感じ始めたころ、インプットへの関心が一気に高まります。
この段階で、たとえば、営業担当者であるならば、初回訪問時に顧客から敬遠されることなく会話ができる術や
プレゼンテーション時に、うまく相手の心に響く話し方などのスキルやスタンスをOFFーJTで教えると、効果は抜群です。
現場でもまれ、それなりに挫折も味わうこの時期に、一気にインプットすることで、勇気と自信を与えるのです。
新入社員への指導効果も狙う
2年目の彼らに、この時期に体系的なスキルや知識を習得させるもう一つの狙いは、新入社員への指導効果です。
人は誰かに指導せねばならないとなったら、自身が理解するレベル以上のインプットを行います。
人に何かを教える、指導することは、それだけ難しい技術だからです。生半可な知識やスキルだけでは、相手に見透かされてしまいます。だからこそ、日ごろ新入社員から仕事のことを聞かれて、うまく答えられなかった、という苦い経験を積み始めた彼らにとって、もう一度、一から体系的なインプットをすることの必要性が増すわけです。
筆者の原体験も
実は、何を隠そう私自身、社会人2年目に大きな転機がありました。
JTBの法人営業担当として入社し、1年目はほとんど結果を出せず、悶々としていた時に
2年目にあるクライアントを自ら担当したいと申し出ました。
それまでそのクライアントは、繁雑な業務で、それほどもうけが少ないと、皆がやりたくないと敬遠するような状態でした。
1年間ですっかり、仕事への興味や自信を失いかけていた時に、私にとって、このクライアントは救世主だったのです。
ただ残念なことには、当時、そのようなハングリー精神の塊のような私に、OFF-JTの機会には恵まれませんでした。
結果的には試行錯誤で、OJTの中で必死に仕事の進め方のコツをつかんでいったのです。
今から思えば、あの当時、(手前味噌ではあります)営業についての体系的な知識やスキルを習得していたら、もっと結果を出せたのではないかと感じる次第です。
勝負は2年目。
この1年が大きな差を生むのです。
人材育成コンサルタント 田原洋樹