『インバウンド戦略成功のヒント~上智大ハラル弁当人気を考える~』
キリスト教系大学でイスラム教対応の懐の深さ
上智大学キャンパス内で、イスラム教を信仰する留学生対象に「ハラル弁当」を発売し、連日完売の盛況ぶりとのことです。
カレーやハンバーグなど、バリエーション豊かなメニューが500円以内で提供されており、本来のターゲットであるイスラム教信仰の留学生以外の日本人の学生にも大好評とのこと。
本来、上智大学はキリスト教系の大学ですが、イスラム教徒をはじめとする多様な宗教を受け入れようとする姿勢はインバウンド観光戦略を進める上でも大いに参考になりますね。
インバウンド観光を促進するうえでは、何と言っても地域に住む人の外国人観光客に対する興味や関心を喚起していくことが大変重要です。
さまざまな国から来る彼らに対し、その国の文化や風習、価値観やこだわりなどを理解することは受け入れの「前提」として捉えなくてはなりません。
異文化を受け入れる姿勢、今回の上智大学のハラル弁当販売にはそのような「寛容」さが垣間見られます。
これこそが、インバウンド観光戦略には欠かせないスタンスと言えるでしょう。
思わぬ相乗効果がPR効果を生む好循環
見逃せない現象としては、今回は本命である「イスラム教系留学生」よりもむしろ、日本人の学生に人気の火がついたことです。
「ハラル弁当」を発売し、イスラム教系の留学生に受け入れるだけでは、今回のように各メディアが一斉に取り上げることはなかったでしょう。
毎日用意されるハラル弁当は150食ほどのようですが、そのうち、120食は「本命ターゲット」以外の学生が購入するようです。
このように、本命以外のユーザーにも拡散していくことで、よりPR効果が増幅していく現象はよくあることです。
インバウンド観光を本命としてプロモーション活動を展開する過程で、「一時、鈍っていた日本人観光客の数も増えた」という現象は各地で起きています。
インバウンド観光が街を活性化させ、PR効果も手伝って、観光地としての姿を蘇らせていく。このような新しい地域活性化の潮流が出来つつあるのです。