商店街のシャッター化は、今や全国津々浦々で見かける風景となりました。
最近、大学生と域学連携型の活動をしており、地域の商工会の方とお話もするのですが、いよいよ万策尽きたといった印象をもちます。
アーケードや街路樹の整備など、ハードにたくさんの投資をしても、あるいはイベント等のソフト事業を数多く開催しても、何をやってもうまくいかない。
そう言った類の嘆きをよく耳にします。
そんな時に学生の何気ない行動が、大きなヒントを与えてくれることがあるのです。
以前、商店街を視察していたところ、学生は真っ先に商店街の中にある全国チェーン展開のコンビニに勢いよく駆け込んでいきます。彼らは、そのコンビニが商店街組合に所属しているか否かは全く関係ありません。
彼らは「入りやすいか、入りにくいか」を本能的に感じ取り、そこに吸い寄せられるように入っていくだけです。
彼らに、なぜ、他の店には入らないのか?をたずねると、「店主が店前に腕組してこっちみているから入り辛い」または、「店主がやたらと話しかけてきそうでめんどうくさい」と言うのです。
確かに、コンビニは奥の方にレジカウンターがあって、入り口はガラス張りになっていて、中の様子も良く見えて、清潔感があって、入りやすく設計されています。また、レジ打ちのスタッフも必要以上にコミュニケーションをとってはきません。
一方、商店街の個店は、店奥が見えづらい上に、先ほど学生が言ったように店前にどっかと、店主が待ち構えています。どう考えても、入り辛い構造になっています。そして、やたらとコミュニケーションを取りたがる印象があります。
ある商店街の調査では、「消費者が商店街に期待する役割」として、実に72%の人が「気軽に買い物ができる場所」と挙げています。2位の「子育て世帯の生活の支援」が33%であるのを見ると、この数字がいかに飛び抜けているかがわかるでしょう。
ちなみに「店主とのコミュニケーションの場」は9.3%となっており、回答項目の中では最下位となっています。
そうです、消費者は気軽に入って、気軽に買い物をしたいのです。
そして、店主とのコミュニケーションはむしろ面倒くらいに感じている消費者もいることがこの数字でわかります。
このように学生の何気ない行動から消費者の心理を感じ取り、店舗での接客態度を変えるだけでも、随分と店の雰囲気は変わります。
決して巨額なハードへの投資をしなくても、ちょっとした工夫で来客数を増やすことが可能なのです。
そして、それを実現するために、消費者の声をできるだけくみ取る意識、工夫、覚悟が必要ですね。
域学連携活動をしながら実感するこの頃です。
株式会社オフィスたはら 代表取締役
明星大学経営学部 特任准教授
田原洋樹